
破壊者の母、篠田工治です。
エニアグラムの矢印考察第6回目です。
前回は善悪2元論型の矢印解釈をするドンリチャードリソ氏、ラスハドソン氏についてご紹介しました。
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【4つの矢印解釈】
- 善悪2元論型
- 長短併せ持ち型
- 善悪長短混合型
- 割愛型
【善悪2元論型の矢印解釈を採用する会派と著者一覧】
- クラウディオナランホ氏(エサレン研究所、真理の探求者研究所)
- イエズス会(キリスト教カソリック)グループ
- ドンリチャードリソ氏、ラスハドソン氏(エニアグラム研究所)
- ティムマクリーン氏、高岡よし子氏(C+F研究所、エニアグラム研究所日本支部)
- 武田耕一氏、和泉育子氏、田中きよみ氏(日本エニアグラム学会)
- 木村孝氏(国際コミュニオン学会)
- 竜頭万里子氏(究極のエニアグラム性格学)
- 安村明史氏(エニアグラムコーチング)
今回は少し前置きをしてから、善悪2元論型の矢印解釈を採用する、残りの会派と著者についてご紹介します。
目次
第4世代のエニアグラム
前々回と前回は、
- クラウディオナランホ氏(エサレン研究所、真理の探求者研究所)
- イエズス会(キリスト教カソリック)グループ
- ドンリチャードリソ氏、ラスハドソン氏(エニアグラム研究所)
という3つの会派における矢印解釈を簡単にご紹介しました。
この3つに次回ご紹介するヘレンパーマー氏を加えた計4つの会派が、オスカーイチャーゾ氏の簡素なエニアグラム解釈に様々な肉付けをした、最初の功労者と言ってもいいでしょう。
- 第1世代:グルジェフ氏(神秘思想としてのシンボル図の提示と活用)
- 第2世代:イチャーゾ氏(神秘思想+新たな性格分類としてのシンボル図の提示と活用)
- 第3世代:ナランホ氏、イエズス会、ヘレンパーマー氏、リソ氏(新たな性格分類に対する考証、研究、実用化の促進と拡散)
こんな感じですね。
で、まだご紹介していない、
- ティムマクリーン氏、高岡よし子氏(C+F研究所、エニアグラム研究所日本支部)
- 武田耕一氏、和泉育子氏、田中きよみ氏(日本エニアグラム学会)
- 木村孝氏(国際コミュニオン学会)
- 竜頭万里子氏(究極のエニアグラム性格学)
- 安村明史氏(エニアグラムコーチング)
というお歴々も、もちろん著書や講演、セミナー、ワークショップなどでそれぞれご活躍されているのですが、エニアグラムの世代的には第4世代に当たります。
基本的には第3世代であるナランホ氏、イエズス会、リソ・ハドソン氏の考えを踏まえた矢印解釈なんですね。
なので以下簡単なご紹介に留めたいと思います。
ああ、そうそう。前回までは カレンウェブ氏につき善悪2元論型に含めていましたが、書籍を読みなおした結果、長短併せ持ち型に変更したことをお伝えしておきます。
ティムマクリーン氏、高岡よし子氏(C+F研究所、エニアグラム研究所日本支部)
最初にご紹介するのはティムマクリーン氏、高岡よし子氏ご夫妻の矢印解釈です。
このお二人はC+F(シープラスエフ)研究所を運営されており、伊豆や東京を中心にワークショップや企業研修、講演活動をなさっています。
ご夫妻ともにドンリチャードリソ氏、ラスハドソン氏に師事し、その関係でエニアグラム研究所の日本窓口の運営もされており、ラスハドソン氏の来日イベントなども取り仕切られているとのこと。
ということで、ご夫妻の矢印解釈はリソ・ハドソン両氏の解釈と全く同じになります。
ご夫妻の共著、「エニアグラム 自分のことが分かる本」では、精神面において矢印の正方向がストレスの方向、矢印の逆方向が成長の方向として紹介されています。
又、前回お伝えしたリソ氏の概念「成長のレベル」についても、
- 「健全・通常・不健全」という3つの段階があること
- 各段階につき更に3つの小段階があって合計9レベル存在すること
などがごく簡単に紹介されています。
そして成長に必要なのは「自分の性格パターン=自我」を手放すことだと巻末で説いているんですね。
あと、某知人から聞いた話ですが、前回お伝えしたリソ氏の最終目標である、「全てのタイプの健全な特性(潜在能力)を身に付けること」が大事だと、ワークの中でティム氏は語っていたそうです。
であるならば「自我や不健全な特性の中にメリットを見出そうとする価値観」と、やはり相容れない関係だと言えます。
そんなことからティム・マクリーン氏、高岡よし子氏ご夫妻の矢印解釈は善悪の2元論型に含めました。
武田耕一氏、和泉育子氏、田中きよみ氏(日本エニアグラム学会)
1989年に鈴木秀子氏が中心となり、エニアグラムの振興と普及を目的として創立されたのが日本エニアグラム学会です。
但しその後、詳しい時期は分かりませんが、鈴木秀子氏は同会から離れ、国際コミュニオン学会を創立するにいたります。
ではその後、だれが同会の代表的存在なのか、部外者である私には分かりかねるのですが、
- 著書や訳書を刊行している
- 公式サイトに肩書きがある
- お友達からの伝聞(汗)
という3つの観点から、武田耕一氏、和泉育子氏、田中きよみ氏の御三方が同会を代表する「顔」と言ってもいいでしょう。
著書、訳書として私が所持しているのは、
- 武田耕一氏「ソニー『TK式』エニアグラムリーダー研修―自分と部下を活かす『9つのタイプ』活用法」
- 和泉育子氏「やってみようよエニアグラム―9つのタイプであなたが見えてくる」「リーダーズノート・エニアグラム 」
- 田中きよみ氏「エニアグラムでパートナー探し」
の計4冊になります。
では、日本エニアグラム学会さんはどのような矢印解釈をしているのかというと、実は手持ちの武田氏、和泉氏の著書には矢印についての説明がそもそもありませんでした。田中氏については訳書なので、ご本人の矢印解釈はもちろん載っていません。
武田氏にしろ和泉氏にしろ、リーダー研修や初心者に特化にした書籍なので、少々細かい知識とも言える「矢印」が省かれてしまうのは、ある意味仕方ないかもしれません。
その意味では、同会の矢印解釈は「割愛型」に含めるべきですが、公式サイトの「エニアグラムの概要」というページには
- 矢印正方向=分裂、矢印逆方向=統合という解釈
- 「成長のレベル」の活用
の2つが掲載されており、同会はリソ氏の解釈を採用していることが分かります。
そして今回の考察にあたり、例のお友達に聞いてみたところ、同会のワークショップでは矢印についてそんなに拘ってはいないものの、やはりリソ氏的な矢印の解釈と「成長のレベル」を採用している、とのことでした。
そんなワケで、日本エニアグラム学会さんの矢印解釈は善悪2元論型に含めました。
木村孝氏(国際コミュニオン学会)
木村孝氏は1990年より鈴木秀子氏に師事し、企業研修やコーチングといったアプローチでエニアグラムの活用と指導をされている御方です。
著書として私が所持しているのは、
の3冊になります。
同氏の矢印解釈をまとめると次のようになります。
- 矢印正方向=分裂、不健全、ストレス、落ち込み、ネガティブ、自他を不幸へ向かわせる、堕落
- 矢印逆方向=統合、健全、安心、成長、ポジティブ、自他を幸福へ向かわせる、自己実現
そして上記3冊の中には、分裂とされる方向に何らかのメリットを見出すような解釈は全くありませんでした。
先に種明かしをしておくと、実は木村氏の師である鈴木秀子氏の矢印解釈は、分裂の方向に何らかのメリットはあるとする「善悪長短混合型」だったりします。
なのでひょっとしたら木村氏も「善悪長短混合型」の矢印解釈を何処かで発信しているのかもしれませんが、書籍情報だけを頼りにするならば、同氏の解釈は善悪2元論型になります。
あと興味深く感じたのは、「矢印逆方向(統合)のタイプに対して苦手意識を持つ」という同氏の説です。
「3・6・9・3」「1・7・5・8・2・4・1」という順番ですから、タイプ3は6を、タイプ6はタイプ9を「きっと誰でも苦手」とするんだそうです。
苦手意識の他には、
- 肌が合わないタイプ
- いちばん嫌いなタイプ
- 日ごろバカにしているタイプ
という表現が書籍にありました。矢印逆方向(統合)のタイプの人を見ていてそう感じるからこそ成長は難しいという論法です。
私の身近な人に限定するならば、確かにタイプ4さんはタイプ1さんを苦手とする方が多いですし、タイプ1さんもタイプ7さんに対し、苦手というか扱いにくさを感じているみたいです。
なので一見説得力がある説だなとは思うのですが、「きっと誰でも」というのは言い過ぎな気もします。
例えば、以前の記事でもお伝えしたとおり、知り合いのタイプ7さんはなぜか統合の方向のタイプ5さんと結婚する率が高かったりします。
また、自身を振り返れば、昔から男女問わず統合方向のタイプ4さんに心惹かれるし(大抵逃げられるけど_汗)、タイプ6さんと9さんのカップル数組を見てても、微笑ましいというか、まんざらじゃないと感じるからです(笑)。
やたらと仲のいい、タイプ1さんとタイプ7さんのコンビも珍しくはなかったりします。
ちゃんとデータを採ったワケではもちろんないのですが、これってタイプにもよるというか、ケースバイケースなんじゃないの?という気がしてなりません。
そしてもう一点、独自解釈というか面白いのは「タイプ10を目指せ」という考え方です。
引用すると
【嫌いなタイプがあなたをタイプ10に導く】
自分のカルマに向き合い、どう乗り越えたらいいのかーその乗り越えた時がタイプ10なのです。 エニアグラムにタイプ10はありません。タイプ10は完全な、理想の人格とされています。(略) そしてタイプ10に導く道標が、あなたが常に反発している人、いやだなと思っている人なのです。 だからどのタイプも大切。そしてどのタイプもタイプ10になれるのです。
こんな感じです。ここでいう反発したり嫌だなと思う人が矢印逆方向(統合)のタイプなんですね。
タイプ10というネーミングの是非はともかくとして、このあたりの考え方については「完全に機能した人間になること」というリソ氏の目標に近いモノがあります。
以前、10ヶ月だけお世話になった国際コミュニオン学会の須田厳子先生が「私はタイプ10じゃないかしら(笑)」などと仰っていたので、同会においては、この「タイプ10を目指せ」という概念は普通に使われているのかもしれません。
竜頭万里子氏(究極のエニアグラム性格学)
竜頭万里子氏は親子関係、夫婦関係、上司と部下、はたまた犬の性格分類など、幅広い観点でエニアグラムの研究や指導、執筆をされている御方です。
私が住んでいる愛知県豊明市からすぐ近くの豊田市ご在住ということもあり、地理的な親近感はあるのですが、残念ながら面識はありません。
エニアグラムに関する著書としては合計7冊執筆されており、私は基本書である「究極のエニアグラム性格学」のみを所持しています。
竜頭氏が誰に師事したのかについては、これまた残念ながら分かりません。書籍やウェブサイトを拝見した限りでは、リソ氏のエニアグラムをベースに独自研究を積み重ねている、そんな感じがします。私と同じく殆ど独学なのかもしれません。
同氏の特徴は2つあって、1つ目は惜しげも無くご自分の理論をウェブサイトやブログで公開していることです。
恐らく日本のエニアグラム会派、指導者として一番多くの情報を公開されており、その姿勢については私も大いに学ばせていただいてます。
2つ目の特徴はその独自理論にあります。
例えば各性格タイプを家族の役割、慣用語、人形の種類、犬の種類などで表現するのは独特で面白いと感じます。
ウィングについても、その影響力の強さを「低・中・高」とするだけでなく、左右どちらにも振れない「ウィングが見つからない人」というレベルを設け、例えばタイプ1なら「タイプ1ウィング1」という名称を付けるなど、かなり独自路線だったりします。
あと、多くの有名人の性格タイプを判定して、その結果をウェブサイトで公開されたり、文章によるタイプ診断を有償で為さっているようです。
で、肝心の矢印解釈ですが、竜頭氏は次のように解釈しています。
- 矢印正方向=性格の後退、質的に悪くなる
- 矢印逆方向=性格の成長、質的に良くなる
そして、リソ氏のように、矢印方向への移行はどちらの方向であっても1段階だけに留まらず、2段階、3段階とドンドン進む、という説を唱えています。
例えば矢印逆方向(成長)であれば、「1・7・5・8・2・4・1」の順ですから、タイプ1の人が2段階の成長を遂げると健全なタイプ5、3段階に進むと健全なタイプ8の特徴を見せるということです。
そして2段階以上の成長を遂げた人は「人格者」と見做され、周囲からの尊敬を受けると定義しています。逆に2段階の後退をした人は「何らかの(精神的)異常性が見られる」としています。
リソ氏の「成長のレベル」については、書籍とウェブサイトを拝見した限りでは採用していないようです。
このような考え方である以上、やはり「矢印正方向(後退)にも何らかのメリットを見出す」という価値観とは相容れることはないでしょう。
なので竜頭氏の矢印解釈は善悪2元論型に含めました。
安村明史氏(エニアグラムコーチング)
今回最後のご紹介になります。
上述の木村孝氏と同じく、企業研修やコーチングといった観点でエニアグラムの指導、研究、執筆を為されているのが、エニアグラムコーチングの安村明史氏です。
同氏は国際コミュニオン学会の吉田久夫氏に師事したと伺っていますが、上述のティム氏・高岡氏ご夫妻を講師としてお招きするなど、会派を超えたお付き合いがお有りのようです。
書籍は「9タイプ・コーチング―部下は9つの人格に分けられる」と「やる気を出させる言葉の選び方」の2冊を執筆されており、私は2冊とも所持しています。
同氏の特徴としては、私も以前参考にさせていただいたのですが、「脳科学とエニアグラムの関係」とか「各性格タイプをアニメキャラクターで表す」などの論点が印象的です。
さて、安村氏の矢印解釈ですが、実は上述の著書からは同氏の解釈を窺い知ることはできません。この2冊はその名のとおり、コーチングやリーダー研修に特化した内容であり、矢印の解説は省かれているからです。
なので「割愛型」に含めてしまっていいものか少々悩んだのですが、同社ウェブサイトの「エニアグラムとは」ページを見ると、次のような内容が書いてあります。
エニアグラムには、健全度という指標があり、人格の成長の段階を示しています。これも9段階に分かれています。エニアグラムを学ぶことで、自分がどのような気質(人格特性・自我の基盤)を持って生れたかの知識理解ばかりではなく、人格的成長の進むべき方向と健全度の高い、あるべき成長の姿が理解できます。
又、同サイトの「プラクティショナー認定コース【アドバンスクラス】」ページには、そのカリキュラムとして、
- 【健全、通常、不健全のレベル】
統合と分裂 統合の方向(意識的な選択)と分裂の方向(ストレス時の自動的な反応)を学習する。- 高岡先生のテーマは「各気質の健全度(成長)のレベル」です
という記述が見られます。
あと、随分前の情報ではありますが、同氏のメルマガ(2006年3月 1日号Vol.222)において、「矢印逆方向は気付かせるべき、学ぶべき方向」といった内容が見られます。
前回お伝えしたとおり、リソ氏の「成長のレベル」は善悪2元論型の矢印解釈と一体となった概念です。
それが安村氏が開く上級講座のカリキュラムになっている以上、同氏の矢印解釈は善悪2元論型と言っていいでしょう。
今回はここまで。
簡単なご紹介に留めたいとお伝えしておきながら、結局長くなってしまいました(汗)。
ですがその甲斐あって(?)善悪2元論型の矢印解釈を採用するエニア会派と著者のご紹介が全て終了しました。
次回は善悪2元論型とは対の関係である「長短併せ持ち型」を採用する会派や著者についてご紹介します。
それではまた。
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